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しばしばこんな会話を耳にします
「もう分かったから、お前の好きなようにやりな!」
「分かったよ、つまりこういうことが言いたいんでしょ?」
大概このようなことを言う人は本当のこと(相手が考えていることや思っていること)を分かっていないことが多いです。
人の言動には、表に出てくる部分だけではなく、その裏に様々な思いがあります。
本当の意味で分かるというのは、その背景までも理解して初めて分かるということなのではないでしょうか?
「分かった」という人は何が分かったのか?
それは、簡潔に言えば、自分の予想や認識の違いが分かったということです。
もしくは、知らないもの・ことへの表面的な理解ということです。
ややこしいことに「分かる」という言葉の意味には、相手の気持ちを理解するというニュアンスで用いることもあります。
そうなると、「分かった」という返事を聞いても相手がどこまで理解しているか認識にズレを生む可能性が出てきます。
会話にズレが生まれると・・・
・相手は自分のことを理解していない
・分かった気になって、口先だけだ
・言った言わないの口論になる
このような人間関係を悪化させてしまうことにも繋がりかねません。
ズレを生まないコミュニケーション
頭がすごくいい人や、普段から訓練している人を除いて、自分が話をしてすぐに「分かった」という人は、まず信じないことです。
え、そんな言いきってしまっていいの?と思うかもしれません。
しかし、想像してみて下さい。
仮に、あなたが興味のある話を聞いたときに、「分かった」と答えますか?
おそらく好奇心から、口にしていない出来事や背景が気になり、自然と質問したり、驚いたり、感動したりしませんでしょうか?
これが、本当の意味で分かろうとしているということなのです。
簡単に、出来事や話が分かるなんてことは、そう多くは無いのです。
そうなると、本当に自分は相手の話を分かっているのかと不安になるかもしれません。
「分かる」をやめて、「相手を認めて受け止める」
認めて受け止めるというのは、何も反論するな、反発するなと言っている訳ではありません。
話しの概要を分かろう、アドバイスをしよう、答えを出そうと思うと、両者に認識や想いのズレを生じさせかねないので、一旦は相手の話や相手そのものを受け止めます。
この訓練を意識して行うと徐々に話を聞くことが上手くなってくる(相手とすれ違いが少なくなる)と思うので、ぜひ試して欲しいです。
最後に、相手の話を十分聞いたうえで、自分の話をするようにして折り合いを付けるといいでしょう。
聞きっぱなしで言いたいことを我慢するのは身体に毒なので、相手へのリスペクトを持ちながら自分の思いも丁寧に吐き出しましょう。
今回は、頻繁に使われるであろう「分かる」ということに注目して話を進めてみましたが、少し今までと認識が変わりましたでしょうか?
世の中には、コミュニケーションにズレを生じさせる言葉が数多くあります。
極端な話、全ての言葉は認識のズレをもたらすものと考えても良いかと思います。
言葉は所詮コミュニケーションの道具に過ぎません。使う人によって道具の使用目的や使用方法は異なるのです。
真の「分かる」は頭で「分かる」ではなく、頭と心で「分かる」ということではないでしょうか?
うつ病歴3年。カウンセリングによって症状が寛解した体験を持つ。
現在は産業カウンセラーとして、個人のカウンセリングからメンタルヘルスの研修講師、行政(静岡県・静岡市)の相談員を務める。
「カウンセリングをもっと身近に」をテーマに押し付けない、負担にならないカウンセリングを心掛けています。