タイトルにあります通り、カウンセリングを受けた後に落ち込んでしまう方がいらっしゃいます。
当カウンセリングルームは相談者の立場に立って寄り添って話を伺う傾聴型で自信を持って行っていますが、それでも一部の相談者からはそのような声をお聴きします。
もちろんそのような方たちが悪いということではなく、どちらかと言えば私の腕のなさが招いたことなのだと思います。
どうしてカウンセリングを受けることで落ち込むという現象が起きるのか少し解説していこうと思います。
1.話をすることで現実と向き合うことになる
みなさんにもこんな経験はありませんか?
・失恋直後はまだ実感がなかったのが、友人に分かれ話をしてはじめてその事実に気付く
・職場で理不尽なことがあって、その時は素直に従っていたが、同僚と愚痴を言い合っていたら腹が立ってきた
ショックな出来事や目を背けてしまいたいと考え、一度は気持ちを押し込める。
そして、口に出してその出来事を話すことでその時の感情もセットになって再確認されることがあります。
おそらくカウンセリングを受けることで落ち込んでしまう方々は、自分の良くないところを再確認してしまったか、今置かれている苦しい現状と向き合うことになったのでしょう。
出来るだけ辛いカウンセリングにはしたくないとは思っていますが、どのような心理療法も自分を知る、自分に気付くという過程を多かれ少なかれ通ります。
そして、この気付きが自分自身を変える(思考・感情・行動・悩みなど)きっかけになるのです。
2.相談者とカウンセラーの信頼関係が不十分
いくら専門家であろうが、ぐいぐい話を聴いてきたり、質問責めをしてきたり、触れて欲しくないことを聴かれれば嫌な気持ちにもなりますよね。
初回~3回程度のカウンセリングではなかなか信頼関係は築きにくいものです。(もちろん相性はありますが・・・)
この点をカウンセラー側が見誤ると相談者はカウンセリングを受けること自体が苦痛になってしまうでしょう。
じっくりとお話を聴いて、相談者の心理や置かれている環境をしっかりと把握し共感してからアドバイスや気付きに繋がるであろう心理療法で関わっていく必要があると私は考えています。
カウンセラーとして最も腕が試されるのは、相談者との距離の詰め方なのかもしれません。
これは資格や経験で容易に推し量ることのできないセンスのような部分でもあるため、
相談者が悪いとかカウンセラーが悪いとかそのような話ではなく単に相性の問題やタイミングも大きく関係するのでしょう。
3.目標設定が高い場合
何か問題や悩みを抱えていると、「解決」をついつい目指してしまいます。
私も以前うつ病を患っていた時は、「うつ病を治したい」とそればかり考えていました。
しかし、そう簡単にいかないのが悩みなんですよね。
今の状況を一発で変えるミラクルな方法というのは存在しないと思っていた方がいいのかもしれません。
直接悩みの解決に繋がるかは分からなくても、今まで試したことが無い事であれば解決に繋がるかもしれないので試してみる価値はあるかと思います。
そのような小さな努力や小さな成功体験を積み重ねることで、気付いた時にその悩みは無くなっているという状態になるのでしょう。
極端な話、うつ病の人に「そんなこと気にするなよ、気の持ちようだよ!」というアドバイスは的を射ているのです。
ただ、その人がそのように考えられないのであればそのアドバイスはハードルが高いものでプレッシャーを与えるアドバイスになるのでしょう。
高い目標設定に関しては、相談者が求めるケースがあるのはもちろん、カウンセラー側も早く何とか良くしてあげたいという思いから相談者に伝えてしまうこともあるでしょう。
カウンセラー側が伝える高い目標設定はカウンセラーのミスだと思っています。
今の相談者の状態を見極めて、カウンセラーと相談者の間でしっかりとした信頼関係を築きつつ、
一体感を持って一緒に何が出来るかを考えていけると前向きなカウンセリングになっていくでしょう。
私はうつ病を再発させないためにも、心に余裕をもって相談者の話をしっかり聴くようにするためにも自身のストレスマネジメントは病前よりしっかりとケアするように心掛けています。
どのような状態にあっても、今の自分の能力以上のことをしようとすれば出来ない自分に落ち込んでしまうのも無理はありません。
他人にとって簡単に出来ることも、自分にとって大変な事だと感じることは決して悪い事ではありませんからね。
元気に前向きになれれば、人の可能性は無限大に広がると私は信じています。
相談者の方に知っておいて欲しいこと
カウンセリングを受けることで落ち込んでしまうことがあっても、自分自身を絶対に全否定することはしなくていいですからね。
私は性善説で考えているので、もともと根っからの悪人だったり怠惰な人というのはいないと思っています。
誰しも自分の悪いところに目を向けることはしたくないと思います。
ただ、良い部分も悪い部分も含めて自分自身を認めることが出来ると、言動や考え方に一貫性が出てきます。
(頭と身体、思考と感情などのズレが少なくなる)
カウンセリングやセラピーには「癒し」のイメージがあるかもしれません。
「人に話すことで心が軽くなった」
「自分が何に悩んでいるのか明確になった」
「私は何にストレスを感じているのか気付くことが出来た」
などなど前向きになれる側面はたくさんあります。
その一方で、人に悩みを打ち明ける抵抗感や、嫌な自分と向き合う勇気、目をそむけたくなる環境を認知することなど苦しい瞬間もあるでしょう。
なるべく辛くならないようなカウンセリングを心掛けていますし、いくら解決のためと言えども相談者の方を苦しめるようなことはしたくないので、
遠慮なく何でも素直な気持ちや感想(今の私には大変ですなど)を伝えて頂ければなと思います。
うつ病歴3年。カウンセリングによって症状が寛解した体験を持つ。
現在は産業カウンセラーとして、個人のカウンセリングからメンタルヘルスの研修講師、行政(静岡県・静岡市)の相談員を務める。
「カウンセリングをもっと身近に」をテーマに押し付けない、負担にならないカウンセリングを心掛けています。